「見ての通りこの鍵を外してるの。」と開き直るフキ。
しかし伊織に「何故?」と聞かれ「何故って..」と口ごもるフキ。

「いいじゃんか、どうせここ取り壊すんだから。」

とフキをフォローする雄介。

「それでも今はまだ俺が借りてる。俺の部屋だ。
 勝手な真似しないでくれ。フキさんにも言っておく。」
「違うよ。フキちゃんは早く荷物の整理をした方がいいと思ってそれで..」

またまたフォローする雄介。

「言っとくが俺はここの明け渡しにまだ同意したわけじゃない。
 第一、立ち退く場合は半年の猶予があるのが普通じゃないのか?
 こんなこと、プロのお前に言うまでもないだろうけど。」

とフキ&雄介を睨み部屋に戻る伊織。

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アトリエKにて杏子&紀保。

「あなたはいつだって私の傍に居ていつも私を助けてくれた。
 それがあなたの愛だと言うことは私にも分かっていたわ。
 そこには友情以上の熱い思いがあるということも。」

なんだ、紀保知ってたのか。

「でもね杏子、愛は策略ではないわ。
 自分の愛を守るために誰かを陥れるような真似をするの杏子らしくない。
 例え自分を捨ててでも誰かを守ろうとする、
 それが愛だと教えてくれたのは他でもない、杏子自身なのよ?
 覚えてるでしょ?またイタリアに居た頃..
 あの時私は初めて見返りを求めない無償の愛というものを知ったわ。
 あの時の杏子を知っているから今だってあなたを嫌いになるなんてできない。
 あなたは私の掛け替えのないパートナーだから。」
「紀保さん...グスングスン」
「愛の形は一つじゃないわ。
 私だって杏子のことを心から愛してる。本当よ。
 この先どうするかはあなたに任せるわ。
 しばらく一人になってよく考えて。」

アトリエを出る紀保、そこには龍一の姿が。

「いてくれたの?」
「どうした?彼女は?」
「ごめんなさい。杏子のしたことは私が謝ります。
 どうか許して下さい。ぺこり」
「僕は君の誤解さえ解ければそれでいい。」
「今夜はこのまま杏子の傍に居たいの。
 彼女の気持ちが落ち着くまで。」

アトリエにて一人泣き崩れる杏子。←泣き声を廊下で耳にする紀保。
 
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伊織の部屋にて、一人で考え事をしてる伊織。

「S...諏訪杏子...」

『『諏訪杏子のSだというならフキさんだってSよ。柴山フキだもの』』

「フキさんが?」←そうだ、一応疑ってみるものだ。

トントン(来客)

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工作所にて雄介&フキ。

「伊織さん、きっと私のこと、心の狭い女だと思ったに違いないわ。」

心が狭いというかそういう以前の問題ですね、チミは。

「ハハハ、そんなことないって。
 ってか伊織さんの方こそ心が狭いっていうか
 何かちょっと冷たいっていうかケツの穴がちっちゃいっていうか
 何か豆粒サイズみたいな何か..」
「フフッ。雄介さんって子供の時からいつもそうね。
 人が落ち込んでると決まっておかしなこと言って
 笑わせようとして..
 実際はあまりっていうかほとんど笑えないんだけど。」

フキは常に一言余計(↑最後の一行ね)なのである。

「ハァ〜」←フキの余計な一言のせいで落ち込む雄介。
「でもそんな雄ちゃん嫌いじゃない。」←じゃあ愛してやれ!頼む!

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伊織の部屋に龍一登場。

「すまない、突然。
 今日は誰かと飲んで話したい気分でね。
 そうでもしなきゃ眠れそうになくて。大丈夫、薬は飲んでない。
 アルコールと一緒に飲んじゃまずいってそれを心配してるんだろ?」

みのりに襲われた時もブランデーに薬を入れられたんですよね?

「ああ、まあ。」
「だが悪かったかな。?そっちこそ仕事で疲れてるだろうに..」
「いや俺もその後、杏子さんのことはどうなったか気になってたし。」
「彼女ならおかげでどうにか紀保の誤解も解けた。
 彼女は紀保のことが好きだったんだ。
 だから僕を紀保から遠ざけようと色々画策して..」
「じゃあそれが目的でみのりを殺しあんたに罪を着せようと?」
「いや、彼女はあの事件とは直接関係はなさそうだ。
 そうならわざわざみのりさんに遺書を書かせたりしないだろう。」
「ああ。」
「どうやら彼女は僕が犯人だと思いたがってたようで
 それで彼女なりに僕の正体を暴こうと..」
「そうか..」
「何だ?随分ガッカリしたようだな。」
「いや別にそういうわけでは..」
「しかし君は未だに事件があった部屋をそのまま残してるそうだね。
 フキさんが心配してた。」←龍一もお喋り。守秘義務は仕事だけ、がモットー。
「フキさん?」
「これから幸せな結婚をしようって時に
 相手の男はいつまでも過去にこだわって
 自分の方を見ようともしない。不安になるのは当然だ。」
「いや、見ようともしないなんてそんなつもりは。
 俺だって将来があるからこそ今ここで過去に決着を付けたい。
 そう思ってるだけで..」
「決着なら既についてる。みのりさんは自ら命を絶った。それが現実だ。」
「しかし...」
「いい加減で忘れろ。忘れるのが無理ならせめて
 考えないようにすることだ。
 考えることさえしなければ何もないのと同じだ。」

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ソファで眠る杏子にブランケットをかける紀保←の手を握る杏子

「あ、、ごめんなさい。起こした?」
「お願いです。しばらく休暇を取らせて下さい。」
「ええ、ゆっくり休むといいわ。
 その代わり必ず戻ってきてね。あなたの帰る場所はここ。
 ここは私たちの夢の場所だから。約束よ。」

と杏子の手を握り返す紀保。安心したように眠る杏子。スヤスヤ

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診療所にて加賀&紀保。少し遅れて伊織登場。
伊織と顔を見合わせる紀保。

「さては二人で示し合わせて来たな〜?みのりのことだろ?」
「先生が意識を失う前に言ったことが気になって。」
「さて何から話せばいいか。」

数年前、雉牟田興業の若い男が抗争で腹に銃弾を受け担ぎ込まれた。
雉牟田は警察に通報されたら困るからと処置を依頼。
助かっても一生寝たきりになるくらいの重傷←安楽死させる。
それ以後雉牟田が薬を要求←断ると脅してくる。

「要するに俺は善人ではないがかといって悪人でもない。
 ただ..ただこの上もなく弱い人間だったってことだ。」
「それをみのりに気付かれて金を?」
「最初は2万か3万、やがて20万30万、ついには300万に..
 だから俺はここでもう最後だと念を押して金策に走った。
 だがその金を渡す前にみのりは死んだ。
 これで分かったろ?自殺するはずがないと言ったわけが、、。
 その一方で遺書が見つかったのも事実だ。自殺かそれとも他殺か。
 いずれにしても俺の話は以上だ。何か質問は?」

伊織&紀保が同時に

「先生は...」

「どうした?やけに気が合うんだな、二人とも。」
「先生はみのりを殺したのは誰だと?雉牟田の連中が?」
「いやそれはないだろう。接点はなかったはずだし
 みのりが俺に口止め料を要求していたことも知らないはずだ。」
「じゃあ他に誰か心当たりは?」
「ああ、そうだな、、いやしかしめったなことは言えないよ。
 いやところで紀保さん?この前初めてあんたの婚約者だっていう
 弁護士さんに会ったが、その時ふと気になってな。
 紀保さんも伊織も『一事不再理』って言葉は知ってるよな?」
「一事不再理?」
「それがなにか?」
「いや、、、フッいいんだ。
 あの人は法律のプロだからちょっと気になってな。
 いやあ忘れてくれ。」
「先生、最後にもう一つ。
 みのりは先生からもらった金を何に使うか言ってましたか?」
「言ってた。花嫁衣装だ。」
「えっ?」驚く紀保。

「誰にも負けない花嫁衣装を作る、そう言ってた。」
「花嫁衣装、、大丈夫か?」
「みのりさん、龍一さんと結婚するつもりだったのね..きっと。」

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伊織、柏木に一事不再理について聞いたみたいです。

『『一事不再理っていうのは憲法で保障されてる国民の権利の一つ..
  人は一つの事件に対して二度処罰されることはない..
  無罪の判決が出た行為について二度と刑事上の責任を問われることはない』』

 
 “ しかし加賀先生、何だって一事不再理なんて、、”

再びメモを見直す。

  “ せめてこれが誰か分かれば、、”

メモを眺める伊織、何かに気付いた様子。

「Sではなく『い』、、。乾龍一?」

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新居に紀保が引っ越してきたようで
シャンパーン飲みながらいい雰囲気の紀保&龍一。

「そうだ、これ、羽村社長から結婚祝いだと渡された。」

と紙を受け取る紀保。

「見ての通り、羽村社長とうちの伯父のサインもある。
 せっかくだから明日でも出してこよう。」
「そうね。」

えっ?紀保って龍一と結婚する気あったんだ?

スキス〜してこれからって時に龍一、
みのりに襲われた時のことを思い出しフラフラながら猛ダッシュで寝室へ。
例の薬を飲む龍一。

「どうしたの?龍一さん。気分でも悪い?」と寝室に入る紀保。

「いや、大丈夫。」と不敵な笑みを浮かべる龍一に驚く紀保。
目がギンギラギンです、龍一。

「龍一さん?」

====つづく====

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